2007年3月30日金曜日

OCTの次の技術は?

光コヒーレンストモグラフィー(OCT)の研究を始めてから、そろそろ 5 年になります。一年位前からたびたび「OCTの次の技術、ポストOCTはどんな技術だと思いますか?」と聞かれるようになりました。最初の頃は、「非線形光学顕微鏡ですかねぇ」とか「音響光学トモグラフィーですかねぇ」とか答えていたのですが、なんだかしっくりきません。なんだかんだで悩んでいたら、最近になって、「ポストOCTはポストOCTでしょう」と思うようになりました。

確かに、利益をあげなくちゃいけない企業の人、公的資金獲得に忙しい大学人・国立研究所の研究者、それぞれが「次の技術の流れはどこにいく?」と気になるのはわかります。先のことは僕だってきになります。「今年はどんな食べものがはやるんだ!?」とか。食べ物です。食べ物。技術じゃなくて。どうして僕が「食べ物の流行」が気になるのか。それは僕が、「食べ物を食べて生きていて、けれども、僕自身は『食』という産業にかかわる人間ではないからだと思います。

人間はだれでも「食」と密接にかかわっています。そして、僕のように「食」の流行に対して決定権のない人間は、誰か別の人間がしかけた流行が気になるのです。逆に僕が外食産業の企画屋だったら、多分「今年は何がはやるか」ではなくて「今年は何をはやらせてやろうか」を考えていると思います。そして、僕がもし単純に食べ物の好きな料理人だったらもっと簡単に考えると思います。つまり、「今年は何がはやるか」ではなくて「もっとおいしい料理をつくるにはどうしたらいいか」と、いうようなことを。

僕は OCT の開発をしています。だから僕にとっての疑問は「次に何が流行るか」=「ポストOCTは何なのか」ではないのです。僕の疑問は「もっとおいしい料理はどうしたらつくれるのか」=「もっといいOCTはどうやったら作れるのか」なのです。そしてそんな風に考えて仕事を進めていくと、いつのまにかだんだんと技術の顔はかわっていきます。10年後、世界中のエンジニアが少しずつ改良を重ねて様子のかわったOCT、それはすでにOCTとは呼ばれていないと思います。そして、今「ポストOCT」を尋ねる人たちはその技術をみて「これがポストOCTですね」というんだと思います。でも、それは、開発に携わっているエンジニアにとっては、やっぱり、「OCT」なのです。

技術の進歩というのは、そういうものじゃないかなあと、最近思うようになりました。

Joschi

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